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2023年1月9日月曜日

萩のまちと文学⑰ 三好 達治


 シリーズ「萩のまちと文学」

17回目は、詩人 三好 達治(みよし たつじ)をとりあげます。

 

三好達治は大阪府出身の詩人です。

東京帝国大学仏文科を卒業後、「詩と詩論」に参加、のちに堀辰雄らと詩雑誌「四季」を創刊します。

萩原朔太郎を師と慕い、伝統詩を継承しながら、フランス近代詩の手法を取り入れた独自の境地を開きました。

昭和28年に『駱駝の瘤にまたがつて』により芸術院賞を、昭和38年に『定本三好達治全詩集』により読売文学賞をそれぞれ受賞しています。


さて、そんな三好達治ですが、萩への旅行記も残しています。

シリーズ第11回で紹介した河上徹太郎、井伏鱒二の3名での旅の様子が『三人旅の記 -防長行脚-』「萩から山口まで」に書き記されています。

 

「越ケ浜の明神池は、その先につき出た小半島が噴火山の笠山といふのを噴き起こした時に、そこのところのくびれに形づくつた小さなひと眼に見渡せるつきりの池(むろん鹹水の)であるが、池中には猿沢池の鯉鮒のやうに、現在はそれくらいの密度でまだいや黒鯛その他の磯魚を養殖させてゐる。自然の生簀とも水族館ともいつていいその岸辺にたつて手をたたいてアンパンを投げると、それらのくづが水面に跳り出て素早く啄むことまた猿沢池と同じである。井伏君は釣意をうごかしたかもしれないけれども、むろん釣らせてくれる筈はない、天然記念物だから。それは一見にとどめてもまた海水を仕切つた生簀のあつたのはこの方は天然記念物ではなかつたから、井伏はさつそく仕事にかかつたけれども、仕損じて一度釣り落したきり後は釣れなかつた。残念ながら時間もたりなかつた。」

『三人旅の記 防長行脚』「萩から山口まで」より













国指定の天然記念物である明神池は、笠山の東麓にあり、笠山と本土との間に砂州が堆積し、陸続きになったときに埋め残されてできた池です。

池は溶岩塊の隙間を通して外海と繋がっており、当時と変わらずイシダイ、マダイ、クサフグなど海水魚が生息しています。

池の魚への餌やりの様子は、現代を生きる私たちと変わらない風景で、三好ら三人の姿が目に浮かぶようです。

天然の水族館とも呼ばれる明神池で作家たちの見た景色に思いを馳せながら、雄大な自然を感じてみませんか?

凛とした空気の中、ゆっくりと深呼吸をして新たな気持ちで一年を歩み出したいですね。

 

 

最後に、寒の入りを迎えたこの時季に味わいたい詩をご紹介します。

 

「雪」

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

(『測量船』 三好達治/著)














【参考図書】

『ふるさと文学館 第41巻』 磯貝 英夫/責任編集

『駱駝の瘤にまたがって 三好達治伝』 石原八束/著

測量船』 三好達治/著 

『萩市の史蹟名勝天然記念物』 金子久一/著 

 ※当館所蔵あり

『作家たちの文章で綴る 萩のまち文学散歩』 萩図書館「文学散歩」制作委員会/

 ※当館所蔵あり カウンターにて発売中(¥300