2021年11月3日水曜日

萩のまちと文学 ②諸井條次(もろい じょうじ)


2021年、7月に児童文学者の那須正幹さんが逝去されました。雑誌『こどもとしょかん』1に、那須さんが『絵で読む 広島の原爆』※2、『ぼくらの地図旅行』※3などについて「私の仕事は広島の原爆について、あらゆる角度から解説をする。しかも子どもにわかる言葉で表現しなければならない。(中略)被爆を体験している世代としては、この絵本が、あの日のことを語り伝えるよすがとなれば望外の喜びである。私にとって、この本は遺書のようなものなのだ。」と述べられている記事をきっかけに、ノンフィクション『折り鶴の子どもたち ―原爆症とたたかった佐々木貞子と級友たち』4を読みました。この作品は広島平和記念公園にある「原爆の子の像」のモデルである佐々木貞子さんとクラスメートのことを那須さんが2年余をかけて取材し、私情や想像を廃し、事実のみに徹して書かれた本です。

 


 

この本は劇「千羽鶴」、映画「千羽鶴」の原作で、この劇と映画「千羽鶴」のシナリオを書かれた方が萩在住の戯曲作家の諸井條次さんという事を初めて知り、萩と深いかかわりがあることに驚きました。

諸井條次さんは東京生まれで、学生時代には多くの新劇の舞台に触れ、一族が経営する事業で働く人々の姿や暮らしに深い関心を寄せるようになり、思想形成に大きな影響を受けていきます。そして、終戦後は母方の叔父を頼って萩に定住して山口演劇研究所を設立し、戯曲作品を発表します。更に「劇団はぐるま座」を組織し、児童劇の普及活動に情熱を注ぎ、46歳の時に構成劇「千羽鶴」、映画「千羽鶴」の脚本を手がけます。

 


                       「写真提供:広島県」

 

晩年には、歴史書「萩の乱と長州士族の維新」を出版、「防長士族叛乱史料集成目録」「中国漁民救助聞書」を執筆し、83歳で多忙で激動の人生を閉じました。

今まで知らなかった萩のまちとつながりのある文学者について知ることができました。

 

 

参考図書

・『やまぐちの文学者たち』やまぐち文学回廊構想推進協議会/編者 やまぐち文学回廊構想推進協議会

・『萩の乱と長州士族の維新』諸井條次/著 同成社

・『防長士族叛乱史料集成目録 諸井條次/編 萩市郷土博物館

・『中国漁民救助聞書』 諸井條次/著 日中友好協会山口県連合会

・雑誌:こどもとしょかん2021年夏号 p28この人、この本24より 当館所蔵有 ※1

・絵で読む広島の原爆、ぼくらの地図旅行:共に萩図書館所蔵有 ※2,※3

・折り鶴の子どもたち:明木図書館所蔵 ※4

 

※参考図書(番外編:カウンターで販売中)

『作家たちの文章で綴る 萩のまち 文学散歩』萩図書館「文学散歩」制作委員会/編集 萩まちじゅう博物館出版委員会/発行