シリーズ「萩のまちと文学」。
第15回目は、城下町を愛した建築界の大御所、
藤島亥治郎をとりあげます。
藤島亥治郎は、岩手県出身の建築史家です。
東京大学工学部を卒業後、東京大学名誉教授を務め、日本建築学会名誉会員や文化庁文化財保護審議会専門委員を歴任しました。
昭和43年に日本芸術院恩賜賞、63年に日本建築学会大賞を受賞しています。
そんな藤島亥治郎が、萩の城下町を訪れたときの様子が、
昭和53年発行の著書 『城下町探訪(一)』に書き記されています。
「古びた白漆喰に傷が付いたり、半ばはげ落ちたりしたものもあれば、
漆喰がすっかりはげ落ちて、
赤黄色い粘土壁がざらざらした地肌をあらわしたもの、
それがひび割れて一部欠け落ち、瓦屋根も傾いたものもあれば、
中にはきれいに塗り替えられたものもあれば、
ほとんど崩れて垣の内がのぞかれるのもあり、
中には平瓦の間に粘土をつめて重ねたものもあり、
それぞれに特色のある美しさが、私たちに笑いかけたり、歎いたり、
おつにすましたり、えらがったりしてくれる。
私たちも、それと話し合いながら歩みを続ける。」
個性的で美しい土塀たちに囲まれ、そのそれぞれが人々に語りかけ、
何かを伝えてくるかのような萩のまち。
萩市は、昭和51年に堀内地区と平安古地区、平成13年に浜崎、平成23年に佐々並市(ささなみいち)が、国選定重要伝統的建造物群保存地区になりました。
ひとつの市区町村に所在する伝建地区の数は、京都市、金沢市と並び
全国で最多となっています。
「武家の屋敷構えの並んだ小路をどことなく散策することほど、
萩らしい雰囲気にひたるものはないだろう。
急ぐことはない。どことなく、好きな道をあるけばよいのである。」
江戸時代の面影が色濃く残る城下町を歩いていると、まるでタイムスリップしているかのような不思議な感覚を味わうことができます。
歴史の情緒あふれる萩のまちを散策しながら、ゆっくりとまち並みをながめ、萩らしい雰囲気にひたってみてはいかがでしょうか。
【 参考文献 】
『城下町探訪(一)』 藤島亥治郎/著 千人社/発行 ※当館所蔵あり(館内閲覧のみ)
『作家たちの文章で綴る 萩のまち文学散歩』
萩図書館「文学散歩」制作委員会/編集 萩まちじゅう博物館出版委員会/発行
※当館所蔵あり カウンターにて発売中